ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)

パブリッシャー
集英社
価格: ¥740

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)のレビュー

第一部を読了して(まだ第二部、第三部があるけど…)
正直なところ、ようやく第一部を読み終えた、というのが率直な思いである。
特に難しい単語が使われているわけではない。
でも、この小説は他の小説で同じ分量を読了した時より、数倍疲労感がある。

この小説は書かれた内容をそのままに捉えるのではなく、
当時の漠然とした不安な世相や、人間が根源的にもつ欲望や心理など
いままで数多くの小説家や芸術家が、その完全な描写化に挑戦したが
表面をなぞるだけか、あるいは全くの失敗に終わっていたものを
グラスはこの作品により、描写化への完成へ大きく近づいた
というようなことが一般的な評価だろう。

つまり、この小説ではそれぞれの表現に隠喩(メタファー)が存在し、
すなわちオモテとウラとで多面的な意味が盛り込まれているため
読者は隠喩を正確に読み解かなければ、
いくら読んでも作者の意図の数パーセントも理解できていないという、
まさに読者の読む力が試される恐ろしい作品なのである。
そう、この小説の正体はまさに、3歳児のこどもである。
表面上は、ニコニコしたイノセントな子どもに見える。
しかし、無用心に近づくと本当に痛い目にあう。
3歳の子どもなのに、大人と接する時以上に体力と精神力がいる。
やっかいだ。理解不能だ。子どもって何考えているのかわからない。
自分のペースを完全に壊されてしまう。疲れる。
でも楽しい。愛らしい。複雑な気分。
厚い。
この本についてのレヴューを書くことは私には難しいです。
なぜなら、この本に潜んでいるテーマはあまりにも盛りだくさんで複雑だし、
さらにそれが幻想的に暗喩的にと あらゆる巧い(しかもそれが全然嫌味に感じられない)
コーティングを施して表現されているのだから、簡潔に要約することができないのです。

いやぁもう奥が深いというか層が厚いというか。

解説にもあるように 当時の民族問題の暗喩として読むのはもちろんおもしろいし、
心理学的な側面を意識して読んでも楽しめるのではないかと思います。
「三巻もあるのはちょっとなー」という人には、
フォルカー=シュレンドルフ監督が第一部だけを映像化した映画を観ることから始めるのもお勧めです。